○千曲市食料・農業・農村基本条例

平成21年12月25日

条例第27号

(前文)

千曲市の農業は、千曲川と緑豊かな東西の山々に育まれた善光寺平の肥沃な大地のもとで、先人たちの英知と努力によって多彩な農産物を生産してきた。

農業及び農村は、水と土を大切にしながら農産物を生産し、生命活動の源である食料を供給するだけでなく、四季折々の美しい景観の形成、水源のかん養、洪水の防止、生物多様性の保全等多面的な機能を発揮する役割を担い、市民生活に大きな恵みをもたらしてきた。

しかしながら近年、経済の国際化、農産物貿易の自由化、都市化の進展、食生活の多様化を背景に、農業者の減少や高齢化、農地の減少、食料の安全性への懸念等、食料、農業及び農村をめぐる様々な問題が発生している。

このようなことから、今後、本市の農業及び農村の振興を進めるためには、農業者の意欲向上はもとより、市民一人ひとりが食料、農業及び農村の市民生活に果たしている役割の重要性について理解を深め、地域で生産される農産物の域内での消費の促進を図ることが大切である。

私たちはここに、市民、農業者及び農業団体、食品産業の事業者並びに行政との協働により、食料に対する理解を深め、農業を本市の基幹産業として育みながら、魅力ある農村を次世代に引き継ぐとともに、その進むべき道を明らかにするためこの条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、食料、農業及び農村のあり方についての基本理念を定め、市、農業者、市民及び事業者の責務を明らかにし、必要な施策を推進することで、本市の多彩な農業が持続的に発展する豊かで住みよい地域社会の実現に寄与することを目的とする。

(基本理念)

第2条 食料は、人の生命の維持に欠くことができないものであり、かつ、健康で豊かな生活を支えるものであることにかんがみ、安全で安心できる農産物が安定的に生産され供給されなくてはならない。また、将来にわたって消費者及び生産者の安心が保証されるためにも、地域で生産される農産物が地域内で流通及び消費され、食の重要性に対する理解の促進と地域特有の食文化の継承が図られなければならない。

2 農業は、優良な農地が確保され、基幹的な担い手とその後継者及び多様な担い手により、地域の特性に応じた収益性の高いゆとりある農業が営まれ、千曲市環境基本条例(平成15年千曲市条例第155号)の基本理念のもと自然環境と調和した持続的な発展が図られなければならない。

3 農村は、食料の生産のみならず、市民の生活及び地域活動の場であるとともに、多面的機能を有し自然と人間との共生ができる調和のとれた空間として整備され、かつ保全されなければならない。

(市の責務)

第3条 市は、前条に規定する基本理念に基づき、食料、農業及び農村に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、これを推進するものとする。

(農業者及び農業団体の責務)

第4条 農業者及び農業団体は、自らが安全な食料の生産者であり、かつ農村における地域づくりの主体であることを認識し、自ら生産する農産物について積極的に情報を提供するとともに、安全で安心できる農産物を安定的に生産及び供給し、農業及び農村の振興に関し主体的に取り組むよう努めるものとする。

(市民の責務)

第5条 市民は、食料、農業及び農村が市民生活に果たしている役割の重要性についての理解と関心を深め、地域で生産される農産物の積極的な消費及び健康で豊かな食生活の実践に努めるものとする。

(事業者の責務)

第6条 食品産業の事業者は、食料、農業及び農村が市民生活に果たしている役割の重要性についての理解と関心を深め、消費者への安全で安心できる食料の円滑かつ安定的な供給に努めるものとする。

(主要施策)

第7条 市は、第2条に規定する基本理念に基づき、次に掲げる事項を、食料、農業及び農村の主要な施策として、各々の施策相互の有機的な連携を図りつつ、推進するものとする。

(1) 消費者が安全で安心できる農産物を入手し、食及び農に対する信頼感を保つために必要な産地情報の提供等の施策

(2) 学校、家庭、社会教育機関及び地域社会等と連携して次に掲げる目的を達成するために必要な施策

 食の重要性や地域農産物の生産・流通事情等の理解の促進

 健康的な食生活の推進

 地域の食材を活かした地域密着型食生活と地域の食文化の継承

(3) グリーン・ツーリズム(農村地域において、自然、文化及び農業との交流を行う滞在型の余暇活動をいう。)による都市住民との交流、農業及び農村に関する情報の提供並びに小学生等の農業体験を通した農業及び農村の有する多面的機能の理解促進に必要な施策

(4) 市内の学校給食の食材として、地域で生産された農産物を提供し、地域の農業及び農産物に対する理解を促進する施策

(5) 農業の生産基盤であるほ場、農道、用排水路、ため池等の整備及び遊休・荒廃農地の解消等による優良農地の確保に必要な施策

(6) 農業の基幹的な担い手とその後継者、多様な担い手である女性や高齢者、新規就農者等の育成及び確保に必要な施策

(7) 年間を通じて栽培される多種にわたる作物の振興、高品質優良農産物生産の推進による農業の収益性向上並びに経営の安定を確保できる農業の仕組みづくり及び支援に必要な施策

(8) 農業者、農業団体及び食品産業の事業者並びに消費者の連携強化による地域で生産される農産物の地域内での流通及び消費の促進に必要な施策

(9) 産学官連携による農業関連技術の研究開発及び製品化に必要な施策

(10) 農薬及び肥料の適正な使用、家畜排泄物等有機物資源の有効利用による土づくり等持続性の高い農業生産方式の導入に必要な施策

(11) 農業及び農村の持つ多面的機能を十分に発揮させるための環境整備の推進に必要な施策

(12) 女性農業者の社会的経済的地位の向上を基本に、農業経営及び農業政策等への参画が促進されるよう条件整備を行い、農村における女性の持つ力が発揮される男女共同参画社会の確立に必要な施策

(食料・農業・農村基本計画の策定)

第8条 市長は、前条に規定する主要施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、安全で安心できる食料の供給並びに農業及び農村の振興に関する基本的な計画(以下「基本計画」という。)を定めなければならない。

2 市長は、基本計画を定めようとするときは、あらかじめ広く市民の意見が反映されるよう十分配慮するとともに、第11条に規定する「千曲市食料・農業・農村政策審議会」の意見を聴かなければならない。

3 市長は、基本計画を定めたときは、遅滞なくこれを公表しなければならない。

4 市長は、食料、農業及び農村を取り巻く情勢の変化を勘案し、おおむね5年ごとに基本計画に検討を加え、必要があると認めるときは、これを変更しなければならない。

5 第2項及び第3項の規定は、基本計画の変更について準用する。

(実施状況の公表)

第9条 市長は、食料、農業及び農村の状況並びに基本計画に基づく施策の実施状況をとりまとめ、毎年公表しなければならない。

(推進体制)

第10条 市長は、安全で安心できる食料の供給並びに農業及び農村の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進するための体制の整備に関し、必要な措置を講ずるものとする。

(食料・農業・農村政策審議会)

第11条 市に千曲市食料・農業・農村政策審議会(以下「審議会」という。)を置く。

2 審議会は、市長の諮問に応じ、次に掲げる事項を調査・審議する。

(1) 基本計画の策定、施策の実施状況及び変更に関すること。

(2) 前号に掲げるもののほか、食料、農業及び農村に関する重要な事項。

(委任)

第12条 この条例に定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は別に定める。

この条例は、平成22年4月1日から施行する。

千曲市食料・農業・農村基本条例

平成21年12月25日 条例第27号

(平成22年4月1日施行)