○千曲市家庭教育支援条例

平成27年12月25日

条例第24号

前文

家庭は、教育の原点であり、全ての教育の出発点である。基本的な生活習慣、豊かな情操、他人に対する思いやりや善悪の判断などの基本的な倫理観、自立心や自制心などは、愛情による絆で結ばれた家族との触れ合いを通じて、家庭で育まれるものである。私たちが住む千曲市では、子どもは地域の宝として、それぞれの家庭はもちろんのこと、子どもを取り巻く地域社会その他市民みなで子どもの育ちを支えてきた。

しかしながら、少子化や核家族化の進行、地域のつながりの希薄化など、社会が変化している中、過保護、過干渉、放任など自立心を養う家庭の教育力の低下が指摘されている。また、育児の不安や児童虐待などが問題となるとともに、「いじめ」や「子どもたちの自尊心の低さ」が課題となっている。

これまでも、教育における家庭の果たす役割と責任についての啓発など、家庭教育を支援するための様々な取組が行われてきているが、今こそ、その取組を更に進めていくことが求められている。

こうした取組により、各家庭が改めて家庭教育に対する責任を自覚し、その役割を認識するとともに、家庭を取り巻く学校等、地域、事業者、行政その他市民みなで家庭教育を支えていくことが必要である。

ここに、子どもたちの健やかな成長に喜びを実感できる千曲市の実現を目指して、この条例を制定する。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、家庭教育の支援に関し、基本理念を定め、市の責務並びに保護者、学校等、地域住民、地域活動団体及び事業者の役割を明らかにするとともに、家庭教育を支援するための施策の基本となる事項を定めることにより、家庭教育を支援するための施策を総合的に推進し、保護者が親として学び、成長していくこと及び子どもが将来親になることについて学ぶことを促すとともに、子どもの生活のために必要な習慣の確立並びに子どもの自立心の育成及び心身の調和のとれた発達に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において「家庭教育」とは、保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、子どもを現に監護する者をいう。以下同じ。)がその子どもに対して行う教育をいう。

2 この条例において「子ども」とは、おおむね18歳以下の者をいう。

3 この条例において「学校等」とは、学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する学校(大学を除く。)、児童福祉法(昭和22年法律第164号)第39条第1項に規定する保育所及び就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成18年法律第77号)第2条第6項に規定する認定こども園をいう。

4 この条例において「地域活動団体」とは、社会教育関係団体(社会教育法(昭和24年法律第207号)第10条に規定する社会教育関係団体をいう。)、地方自治法(昭和22年法律第67号)第260条の2第1項に規定する地縁による団体その他の地域的な共同活動を行う団体をいう。

(基本理念)

第3条 家庭教育の支援は、保護者がその子どもの教育について第一義的責任を有するという基本的認識の下に、家庭教育の自主性を尊重しつつ、学校等、職域、地域その他の社会のあらゆる分野における全ての構成員が、各々の役割を果たすとともに、相互に協力しながら一体的に取り組むことを旨として行われなければならない。

(市の責務)

第4条 市は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、家庭教育の支援を目的とした体制を整備するとともに、家庭教育を支援するための施策を総合的に策定し、及び実施しなければならない。

2 市は、前項の規定により施策を策定し、これを実施しようとするときは、区・自治会、保護者、学校等、地域住民、地域活動団体、事業者その他の関係者と連携し、及び協働して取り組むものとする。

3 市は、第1項の規定により施策を策定し、及び実施しようとするときは、保護者及び子どもの障害の有無、保護者の経済状況その他の家庭の状況の多様性に配慮するものとする。

(区・自治会との連携)

第5条 市は、区・自治会が家庭教育を支援するための施策を策定し、又は実施しようとするときは、区・自治会に対して情報の提供、技術的な助言その他の必要な支援を行うものとする。

(保護者の役割)

第6条 保護者は、基本理念にのっとり、その子どもの教育について第一義的責任を有するものとして、子どもに愛情をもって接し、子どもの生活のために必要な習慣の確立並びに子どもの自立心の育成及び心身の調和のとれた発達を図るとともに、自らが親として成長していくよう努めるものとする。

(学校等の役割)

第7条 学校等は、基本理念にのっとり、家庭及び地域住民と連携し、及び協働して、子どもに生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとする。

2 学校等は、市又は区・自治会が実施する家庭教育を支援するための施策に協力するよう努めるものとする。

(地域の役割)

第8条 地域住民は、基本理念にのっとり、互いに協力し、家庭教育を行うのに良好な地域環境の整備に努めるとともに、地域における歴史、伝統、文化及び行事等を通じ、子どもの健全な育成に努めるものとする。

2 地域活動団体は、基本理念にのっとり、家庭及び学校等と連携し、及び協働して、家庭教育を支援するための取組を積極的に行うよう努めるものとする。

3 地域活動団体は、市又は区・自治会が実施する家庭教育を支援するための施策に協力するよう努めるものとする。

(事業者の役割)

第9条 事業者は、基本理念にのっとり、家庭教育における保護者の役割の重要性に鑑み、その雇用する従業員に係る多様な労働条件の整備その他の従業員の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために必要な雇用環境の整備に努めるものとする。

2 事業者は、市又は区・自治会が実施する家庭教育を支援するための施策に協力するよう努めるものとする。

(財政上の措置)

第10条 市は、家庭教育を支援するための施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

(年次報告)

第11条 市長は、毎年度、家庭教育を支援するための施策を取りまとめ、議会に報告するとともに、公表するものとする。

第2章 家庭教育を支援するための施策

(親としての学びを支援する学習機会の提供)

第12条 市は、親としての学び(保護者が、子どもの発達段階に応じて大切にしたい家庭教育の内容、子育ての知識その他の親として成長するために必要なことを学ぶことをいう。次項において同じ。)を支援する学習の方法の開発及びその普及を図るものとする。

2 市は、親としての学びを支援する講座の開設その他の保護者の学習の機会の提供を図るものとする。

(親になるための学びの推進)

第13条 市は、親になるための学び(子どもが、家庭の役割、子育ての意義その他の将来親になることについて学ぶことをいう。次項において同じ。)を支援する学習の方法の開発及びその普及を図るものとする。

2 市は、学校等が子どもの発達段階に応じた親になるための学びの機会を提供することを支援するものとする。

(人材養成)

第14条 市は、家庭教育の支援を行う人材の養成及び資質の向上並びに家庭教育の支援を行う人材相互間の連携の推進を図るものとする。

(家庭、学校等、地域住民等の連携した活動の促進)

第15条 市は、家庭、学校等、地域住民その他の関係者が相互に連携し、協力して取り組む家庭教育を支援するための活動の促進を図るものとする。

(相談体制の整備・充実)

第16条 市は、家庭教育及び子育てに関する相談に応ずるため、相談体制の整備及び充実、相談窓口の周知その他の必要な施策を実施するものとする。

(広報及び啓発)

第17条 市は、科学的知見に基づく家庭教育に関する情報の収集、整理、分析及び提供を行うものとする。

2 市は、教育における家庭の果たす役割及び責任の重要性について、市民の理解を深め、意識を高めるため、必要な啓発を行うものとする。

3 市は、家庭教育の支援に関する社会的気運を醸成するため、家庭教育の支援に積極的に取り組む団体の活動を促進するための取組の実施、家庭教育の支援に関する有用な事例の紹介その他の必要な施策を実施するものとする。

この条例は、平成28年4月1日から施行する。

千曲市家庭教育支援条例

平成27年12月25日 条例第24号

(平成28年4月1日施行)