○千曲市手話言語条例
令和7年3月21日
条例第3号
手話は、手、指、体の動き及び顔の表情などにより視覚的に表現する言語であり、障害者の権利に関する条約(平成26年条約第1号)や障害者基本法(昭和45年法律第84号)においても言語として位置付けられ、手話言語を必要とする者にとって生活する上で必要不可欠な意思疎通の手段である。
しかし、手話言語は、過去に使用が制約されてきた歴史があり、手話が言語として認められてこなかったことをはじめ、手話言語を獲得できなかったこと、手話言語により学習できなかったこと、手話言語を使用しやすい環境が整備されてこなかったこと等により、これまで手話言語を必要とする者は必要な知識や情報を得ることができず、多くの不便や不安を感じながら生活してきた。
千曲市は、手話は言語であるとの認識に基づき、手話言語に関する理解、手話言語の普及、手話言語の獲得及び習得、手話言語による学び並びに手話言語の使用を促進する環境の整備に取り組むことで、手話言語を必要とする者と手話言語を必要とする者以外の者が、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する地域社会を実現することを目指して、この条例を制定する。
(目的)
第1条 この条例は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話言語の理解及び普及に関し、基本理念を定め、市の責務及び市民等の役割を明らかにするとともに、施策の基本となる事項を定めることにより、もって手話言語を必要とする者と手話言語を必要とする者以外の者が、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する地域社会を実現することを目的とする。
(1) 手話言語を必要とする者 ろう者、難聴者、中途失聴者、盲ろう者等をいう。
(2) 意思疎通手段 言語(手話を含む。)、要約筆記、点字、音訳、代筆、筆談、指文字、字幕、代読、実物及び絵図の提示、身振り、手振り、表情、コミュニケーションボード、意思伝達装置その他障がい者が情報取得や意思疎通で利用するものをいう。
(3) 事業者 市内に事業所又は事務所を有する個人又は法人その他の団体をいう。
(基本理念)
第3条 手話言語の理解及び普及は、手話言語を必要とする者と手話言語を必要とする者以外の者が、相互に人格と個性を尊重し合うことを基本として行われなければならない。
2 手話言語の理解及び普及は、手話言語が音声言語と同様に1つの言語として意思疎通手段であるとの認識の下に行われなければならない。
3 手話言語を必要とする者は、手話言語を獲得する機会、手話言語で学ぶ機会、手話言語を習得する機会及び手話言語を使う機会を保障されなければならない。
(市の責務)
第4条 市は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、国及び県と連携するとともに、関係機関と協力し、手話言語の理解及び普及を図るための施策を推進するものとする。
(市民の役割)
第5条 市民は、基本理念に対する理解を深め、前条の市が実施する施策に協力するよう努めるものとする。
(手話言語を必要とする者の役割)
第6条 手話言語を必要とする者は、手話言語に対する理解及び普及に関する市の施策に協力するよう努めるものとする。
(手話通訳者の役割)
第7条 手話通訳者は、基本理念に対する理解を深め、手話言語の普及に関する市の施策に協力するとともに、手話に関する技術の向上に努めるものとする。
(事業者の役割)
第8条 事業者は、基本理念に対する理解を深め、第4条の市が実施する施策に協力するよう努めるものとする。
2 事業者は、その事業活動を行うに当たり、手話言語を必要とする者が手話言語による意思疎通を円滑に行うことができるよう努めるものとする。
(施策の推進)
第9条 市は、第4条の規定により、次に掲げる施策を推進するものとする。
(1) 手話言語に対する理解の促進及び手話言語の普及に関する施策
(2) 手話言語を必要とする者が情報を取得しやすく、利用しやすい環境整備に関する施策
(3) 手話通訳者の確保、育成及び資質の向上に関する施策
(4) 災害その他非常の事態において、手話言語を必要とする者が迅速に必要な情報を取得し、意思疎通を図るための手段の確保に関する施策
(5) 前各号に掲げるもののほか、この条例の目的を達成するために必要な施策
2 市は、施策を推進するに当たっては、手話言語を必要とする者その他関係者の意見を聴くものとする。
(財政上の措置)
第10条 市は、手話言語の理解及び普及を図るための施策を推進するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
(委任)
第11条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。
附則
この条例は、令和7年4月1日から施行する。